海を埋めるのが、正しかった時代について

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 とても合理的な意見だ、とプルセイション・トレインの制作チームは考えた。政府や国からのお墨付きとなり、多くの権力と莫大な財産を築いた彼らは、再び新しい制作に挑むことになった。  こうして、住む人間の有無や人数に合わせて広さの変わる、プルセイション・ハウスが作られた。  家としての機能性やデザイン性、お値段はそのままに、住人の数に合わせて伸び縮みする家。しかも、家主が留守で家の中に誰もいない場合は、誰も入れないほどに薄っぺらくなる。泥棒すらも忍び込めないくらい狭くなるので、防犯も兼ねているとして話題になった。  プルセイション・ハウスの原理で、さまざまな建物が、中にいる人数に合わせて収縮と膨張をするようになっていった。プルセイション・トレインを制作したチームは今や、カーディアック・チームに名称を変え、建築会社と手を結んで多くの建物を生み出していった。  街は、変わった。朝になると都心部のプルセイション・ハウスは急激にへこみ、反対に人々が通勤するプルセイション・トレインと仕事をするプルセイション・ワークプレイスは一気に膨張する。  夕方には、またもや肥大化したプルセイション・トレインに乗った人々が帰るプルセイション・ハウスが、広く快適なサイズになって家主を待つ。  休日も、建物の伸縮は激しい。プルセイション・レストランが道を押しつぶすように巨大化し、プルセイション・デパートやプルセイション・ショッピングモールなどもはや東京ドームより広い。  そんなふうに、人々の移動に合わせて世界中で建物が伸縮を繰り返していた。  しかし、これは人間界だけにおける話である。プルセイション・トレインにはじまり、さまざまなものを制作してきたカーディアック・チームにも、収縮させられないものがあった。  そう、大自然である。
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