45人が本棚に入れています
本棚に追加
同じようにライアンは手をかざし、石が光り、割れる。
ライアンは真剣な表情で転輝石の破片をつまみ、観察するように様々な角度へ転がしていった。
割れた面を見つめ、指先でなぞり――かと思えば石の片割れに持ち替え、暗いまだら模様を凝視する。
(何か気になることでもあるのか?)
気になるが、集中している様子のライアンを邪魔したくない。
見守りながら、ライアンが答えを出すのを待つ。
「うーむ……」
ライアンは小さくうなりながら何度も石の破片を持ち替えては観察し、二つの破片を見比べるように並べ、割れた面を合わせては考えこむように声をもらす。
ライアンの声と卓上を転がる石の音だけが聞こえる中、ふとライアンはその破片に手をかざした。
誰かがライアンに問うよりも前に破片は淡く光り、数秒もしないうちにライアンは手をどける。
卓上の破片は割れた形のまま、色だけが透き通った琥珀色へと変化していた。
暗い色のまだら模様はどこにもなく、まるで初めからこの色だったかのようだ。
おお、とバーレンツが小さく感嘆の声をもらす。
それを気にするでもなく、ライアンは他の破片にも同じように手をかざし、魔力を流していく。
「……うむ。たぶん、分かったと思うのだ」
すべての破片を琥珀色に染め、ライアンは納得したように呟いてケースから新しい転輝石を取り出した。
深く息を吸い、長く息を吐き、胸の前で指を組み、ほどく。
それを3回ほどくり返し、ライアンは転輝石へと手をかざした。
転輝石が淡く弱く光り、すぐにそれは治まる。
割れたような音は一切しない。
「……これでたぶん、できたはずなのだ」
言いながらライアンは手を下ろし、卓上の転輝石をつまみ上げた。
全員の視線がそこへ向き、誰かがホッと息を吐く。
「……お見事でございます、ベールライアン殿下」
ライアンの華奢な指先には、店内の照明を受けて琥珀色にきらめく石があった。
最初のコメントを投稿しよう!