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「うむ。ちゃんと分かったから、もう大丈夫なのだ」
どうやらライアンはハッキリとコツをつかんだようで、試作もそこそこに本番のイヤリングへと手を付ける。
ライアンの自信を裏付けるように、イヤリングの転輝石は危なげなく変化した。
あまりにもあっさりと――数えてはいないがおそらく一分もかからないうちに、未完だったイヤリングが完成したのだ。
「ボクは、この耳飾りをヒロに贈りたいのだ」
そう言ったライアンの表情は、いつになく自信に満ちている。
「ありがとうライアン。嬉しいよ」
本心からそう返せば、ライアンは嬉しそうに顔をほころばせた。
その笑顔をバーレンツへ向け、身を乗り出す勢いで言った。
「……それで、この耳飾りの値段を教えてほしいのですが」
……すっかり忘れていた。
温かな気持ちが一気に緊張で冷える。
もはや買う空気だが、おれたち二人で出し合っても支払える気がしない。
震えそうな手を膝の上で握りしめていると、バーレンツは困ったような表情を浮かべて言った。
「職人に確認を取りますので、十日ほどお待ちいただけますでしょうか」
「分かったのです」
「わ、分かりました」
頷くライアンに合わせてそう返すと、バーレンツはホッとしたように表情をゆるめ――それから真っ直ぐにライアンへ向き直る。
「――それと、ベールライアン殿下にお願いしたいことがございます」
「えっ、えっと、お聞きするのです」
戸惑いながらも頷いたライアンへバーレンツは感謝を述べ、それから真剣な表情で言った。
「先ほどの細やかな魔力操作、実にお見事でございました。ぜひともその技術を買い取りたく思います」
その言葉にライアンはコテンと首を傾げる。
「それは、ボクがシュミーデル宝飾店で働くということなのですか?」
「殿下がお望みであれば喜んでお迎えいたしますが、私めの提案はあくまで技術の買い取りでございます」
ライアンの困惑がますます濃くなる。
「買い取るとは、どうするのですか?」
「殿下が私めに技術をご教授してくださるならば、私めはその対価にふさわしい金額をお支払いいたします」
ライアンの言葉にバーレンツはそう返し、今日一の営業スマイルを見せた。
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