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「ありがとうございます、ベールライアン殿下」
「うむ。この技術で、小さな転輝石の装飾品をたくさん作ってほしいのです」
互いに笑みを浮かべ、ライアンとバーレンツはしっかりと握手を交わす。
「では殿下、さっそくですがご教授願えますか」
「う、うむ。頑張るのです……!」
バーレンツへそう答えてから、ライアンはハッとしたようにおれへ視線を向け言った。
「たぶん時間がかかると思うのだけど、ヒロはどうするのだ?」
「お暇でしたら、お好きなように商品をご覧になられてはいかがでしょう?」
見ていたい気もするが、見ていたところで魔力のないおれにはさっぱり分からないだろう。
(……バーレンツさんも悪い人じゃなさそうだし、同じ店内だし、ライアンから離れても大丈夫かな)
仮にライアンやおれに何かあったとしても、同じ店内にはバルドリースとヘルムがいる。
当てにするのは気が引けるが、おれには身を守る力がないのでいざとなったら頼らせてもらおう。
「……そうですね。他のものも気になりますし、お言葉に甘えさせていただきます」
そうバーレンツへ返し、席を立って近くのショーケースを覗き込んだ。
中に並んでいるのは宝石や装飾のついたヘアピンのようなもの。おそらくはこれがダルムラントの髪飾りなのだろう。
(……そういえば、これに似たものをバルフォールが着けてたな)
最近はずっと外しているから、もしかしたら元婚約者と揃いのものだったのかもしれない。
「髪飾りが気になるか?」
不意にバルドリースの声が問い、おれは反射的に振り返った。
「……ええ、まあ。地球にも似たような髪飾りがあったので」
無難にそう答え、もう一度髪飾りを眺める。
どれもキレイだが、このケースのものはライアンの白い髪にもおれの黒い髪にも合わないような気がした。
このデザインと色合いならもっと濃い色で、けれど暗すぎない髪色のほうが似合うだろう。
それこそ、今ショーケースに映り込んでいるワインレッドの髪色にはよく映えそうだ。
……テラコッタの髪にも似合うだろうが、ピンを留める余裕もなさそうな短髪なので除外する。
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