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額に何かが当たり、体がこわばる。
それがライアンの額だと気づくのに少し時間がかかった。
窺うようにそっと目を開ければ、すぐ目の前にはライアンの顔がある。
悲鳴をあげそうになりながら、何とか唾と共に声を飲み込んだ。
「……うーん、ちょっと熱っぽいのだ」
そう言ってライアンは離れ、心配そうにおれを見つめながら床へ足をつける。
「ヒロ、フォルカー先生のところへ行こう。何かの病気かもしれないし、診てもらったほうがいいのだ」
そして大真面目にそう言い、ライアンは再びおれを抱え上げ医務室へと進路を変えた。
(ただの恋わずらいだよお!)
――なんて、言えるわけがない。
「ら、ライアン。おれは大丈夫だから」
「でも、あんまり大丈夫そうには見えないのだ」
それはそうだ。
ライアンとの距離が近すぎて平常ではいられない。
「すぐに着くから、もうちょっとだけ頑張ってほしいのだ」
そう気遣うようにライアンは言うが、無茶を言わないでほしい。
どこまでも長く感じる道のりの末にようやく医務室へとたどり着き、ライアンはその扉をノックする。
『――はい。どなたでしょうか?』
「ベールライアンなのです」
すぐに扉が開き、招かれるままおれたちは部屋へと入った。
室内にはバルフォールとバルポーレがおり、困惑した様子で何事かと視線を向けてくる。
おれのことを気にかけてくれるのはありがたいが、できれば今は注目しないでほしい。
「フォルカー先生、ヒロが少し熱っぽくて、心配なので診てほしいのです」
そんなおれの心中を知らないライアンの言葉に、一瞬で三人の表情が険しくなった。
(違うんだよ……別に病気とかじゃないんだ……)
決して深刻なことではないと分かっている分、罪悪感に潰されそうだ。
何も言えないまま、助けを求めて視線を泳がせた先でバルポーレと目が合う。
バルポーレは訝しげに片眉を持ち上げ――それから何とも言えない表情を浮かべて頷いた。
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