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「ライアン、伝染る病気だといけないから部屋に戻りなよ」
「えっ、でも……」
「大丈夫。ハイレン医師は名医だからすぐに治してくれるよ。ライアンのツノだってキレイに治ったでしょ?」
「た、確かに……」
そう言いくるめ、バルポーレは席を立ってライアンの手を取る。
「それに、もしライアンに伝染したらヒラサワは気にするんじゃない? たぶんヒラサワはそういう性格でしょ?」
「……う、うむ。分かったのです」
手を引くバルポーレへそう頷き、ライアンは踏み出す前におれへと振り返った。
「……ヒロ、お大事に」
その一言は色んな意味で心に刺さるのでやめてほしい。
「う、うん。ありがとな、ライアン」
「うむ……」
ベッドの上で控えめに手を振れば、ライアンは弱々しく手を振り返して医務室から出て行った。
見るからにしょんぼりとしているライアンをただ見送るのは非常に心苦しい。
それがおれのせいだという事実がさらに重くのしかかった。
深くため息をつき、閉じられた扉から視線を外す。
すぐに視界がかげり、フォルカー先生の目がおれの顔を覗き込んだ。
「……ではヒラサワ様、診察をさせていただきます」
「あっ、いや、大丈夫です。ただの緊張というか、深刻な病気ではないので」
真剣な様子のフォルカー先生にそう返すと、フォルカー先生はやはり真剣な表情のまま言う。
「発熱に心当たりがお有りなのですか」
「ええと……まあ、はい」
「それは、どのようなものでしょう?」
あいまいに答えても、フォルカー先生はそう問うてくる。
「……ヒラサワ、出かけた先で何かあったのか?」
どこか固い空気を感じ取ったのか、バルフォールも険しい表情で促すように言った。
「――まさか、『外なる者』関係か? フォルカー先生なら事情を知ってるから話しても問題ねーぞ」
「ち、違うよ! 本当に深刻な話じゃないんだって!」
「なら何だ? 他に話せないような話題なんてあるか?」
半ば脅すようなバルフォールの声に、逃げ道はないのだと気づかされる。
このまま黙っていても、事態が好転することはないだろう。
おれは諦めて、自分の感情を白状することにした。
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