勇者、落ちる!

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「ほ、ほら! だからっ、だからボクにも資格はあるはずなのだ! そうでしょう、父上!」 「……ふむ。認めよう」  返ってきた声は、さっきの威厳のある声と同じだ。  椅子の男は椅子から立ち上がり、手にした杖を掲げて言う。 「我、バルドリースは五人の王子を挑戦者と認める」  その言葉に杖が光を放ち、五つの光が飛び出した。  そのうちの一つが少年へ降り注ぎ、やがて少年の左手首で形を作る。  光が収まると、そこには銀色のバングルが残った。  それを見てか、インディゴとマゼンタが声を上げる。 「いや――いやいや、おかしいだろ! つーか、反則だろ!」 「こんなの許したら何でもアリじゃないか!」  ……事情はよく分からないけれど、この二人は椅子の男の決定に不満があるらしい。  ところどころに少年への暴言を織り交ぜながら、インディゴとマゼンタはあーだこーだと持論を並べる。 「――フォール、ポーレ、見苦しいぞ」 「でも、ルーヴォ兄様だって納得いかねーだろ!」  それを遮るように黒髪の男から飛ばされた一言に、それでもインディゴは反論する。  それを黒髪はため息で返し、言った。 「他でもない、王が決めたことだ」  その言葉にインディゴはようやく黙り、渋々といった態度を隠しもせずに椅子の男へと視線を向ける。  静かになったところで椅子の男はおれたちを見回し、言った。 「――そして、それぞれの伴侶をその補佐として認める」  同じように杖から光が飛び出し、その一つがおれの右手首でバングルに変わる。  少年のものと同じ形をした、銀色のバングルだ。  それを観察していると、ライムグリーンの髪の少年が眼鏡を押し上げながら言う。 「試練を始める前に提案なんですけど、そのみすぼらしい姿を何とかしません?」  ライムグリーンはおれを指し、眉をひそめた。  
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