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僕が勝手に一人で落ち込んでいると、ジャージーさんに声をかけられた。本当に容赦ないみたいだ。
「すみません、お嬢様が。やかましくて」
「――――大丈夫ですよ」
「ところで、お名前を聞いてもよろしいですか」
そこで僕は自己紹介をしていると、ジャージーさんが僕の一つ下だとわかった。話しながら、ジャージーさんは凄いなと感じた。
僕の一つ下ということは、十四歳ってことなのに、もう立派に働いて人の役に立っている。
魔法だけではなく、剣の腕までも相当なのだろう。佇まいから気品や、オーラを感じているし、ファーストネームがあるってことはどこかの大きな家柄であることは間違いない。
僕は自分が何もできなくて、しかも婚約者がいる貴族の息子に恋をしてしまったことを悔いていた。
そんなことを一人、悶々と考えているとジャージーさんに声をかけられて我に返った。
「ところで、リアム様は最近この辺で魔物が増えていることをご存知でしたか?」
「いえ、知りませんでした。あっ、あと様づけで呼ばなくて大丈夫です。僕なんか……様づけで呼ばれる価値は」
「価値がない人間など、世界のどこにも存在しませんよ」
そう言って軽く微笑むジャージーさんを見て、僕の目頭が熱くなっていくのを感じた。彼にとっては、取るに足らない言葉かもしれない。
それでも、僕にとっては嬉しくて泣いてしまうほどだった。魔法が使えないということだけで、僕は何度も惨めな思いをしてきた。
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