第十章

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 なんでだろうなと思っていると、あっという間にお開きの時間になってしまった。  そして控え室に行こうとすると、緊張気味で震えているセシルさんに声をかけられた。 「その、怪我は大丈夫でしたか」 「はい、大丈夫ですよ。回復魔法で直したので」 「少し、お話いいですか」  そう聞かれたので隣にいた彼に、目配せしみると頷いていたから話を聞くことにした。控え室に行き、ソファに腰掛けると話し始めた。 「僕はリアム……様が」 「リアムで良いですよ。セシルさん」 「僕のこともセシルでいいよ」 話を聞くとセシルは僕を女性だと思っていたため、アイラからウォルターを撮った悪女だと決めつけて攻撃してしまったらしい。 しかも、リアムの話ばかりするダニエルに腹が立っていたこともあり、リアムに八つ当たりをしていた。 「それに、ウォルター様の方がリアムにぞっこんみたいだしね。これから、大事な時間でしょ。邪魔して悪かったね」 「うん、またね」 「ああ、またな」  そう言って少し目頭に溜まった涙を拭って、その場を後にするセシル。本当はとても良いやつなのだろうと思った。
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