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その間も、二人は激しく言い争っている。まあ、完全にジャージーさんの方が勝っているのだが。
僕がそう思っていると、鼻歌交じりな上機嫌なウォルター様が入ってきた。
「リアム、ここにいたのか。探し……。ちっ、なんでいやがる」
「はあ? それはこちらのセリフですわ! わたくしは、ジャージーが行くようにと言ったから来たのですわ! あなたなんかに、要はないですわ!」
「ああ?」
「はい? なにか、文句でもありますの?」
アイラ様を見た瞬間、頬が緩み切っていたウォルター様が不機嫌になった。そして、僕には見せたことがないような表情で罵りあい始めた。
アイラ様も、機嫌が悪そうで双方睨みあいをしていた。見た感じこの二人、非常に仲が良くないのかなと思った。
えっと……ウォルター様と仲がいいのだろうかと思っていると、いつの間にか近くに来ていたジャージーさんが説明してくれた。
「補足事項なのですが、アイラ様はウォルター様の婚約者です」
聞きたくなかった……その言葉を聞くなり、僕の思考は完全に止まってしまった。婚約者、考えてみたら貴族の息子なんだからいてもおかしくない。
それ以上に、ウォルター様が僕には見せたことのないような素の表情を浮かべているのを見て気がついてしまった。
僕が彼を……ウォルター様を好きなのだという事実に……。気づきたくなった、知りたくなかった。
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