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彼にそう言われて、彼の方を見るとほんの少し寂しそうにしていた。その表情を見て、故郷で僕に懐いていた黒猫のハイを思い出す。
いつも、僕が餌を与える時にしか寄って来なくてそれ以外は無視をしている。でも、僕が悲しかったり寂しかったりすると擦り寄ってくる。
そんな可愛くて愛おしくて、僕の唯一の癒しであるハイと表情が酷似していた。
僕が、ハイのことを思い出しているとウォルター様に頬を触って目元をぬぐってくれた。
「泣くな――――その、お前に怒ったわけではない。怪我をしていたから、心配になっただけだ」
「その、ありがとうございます」
僕がそう言うと、彼は優しく微笑んで僕の頭を撫でてくれた。本気で、心配してくれているのが分かった。
その感じが、なんだかくすぐったいやらこそばゆいやらで変な感じがした。考えてみたら、物心ついた時にはもう既に家の手伝いをしていた。
それに、心配してもらった記憶がない。魔法が使えない。たった、それだけのことで必要最低限のことしか話さなくなった。
寂しい、苦しい、悲しい……毎日、消えてなくなりたいと何度思ったことか……。
だから、ウォルター様に心配されて本当に嬉しかったのだ。それから、彼は僕が落ち着くまでずっと抱きしめてくれていたのだ。
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