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ラスベガスの一夜
誰にも負けずに生きていたかった。勉強や運動、就職活動、ささいな遊びのゲームでさえも。
負けることは悪だと思い込んでいたのだ。
ある人に、そう教えられたから……。
「ショーダウン」
艶のある低い声が、円形のガラステーブルに落ちる。
声の主は、株式会社PLAY a la mode――通称プレアラの取締役社長・須郷鞍道。
ここは彼の宿泊しているカジノホテルのスイートルーム。
もうすぐ深夜だと言うのに窓の外は明るく、ラスベガスが眠らない街だというのを実感している。
私、鶴岡唯はごくっと喉を鳴らして、五枚の手札をテーブルの上に開いて置いた。
私たちは現在、ポーカーの勝負の真っ最中。私の手元では、真っ赤なダイヤの柄を揃えた【フラッシュ】という役が出来上がっている。
決して弱くはない役だが、正面の須郷社長が開いた手札を見て敗北を悟った。
彼の手札は、8のワンペアとQのスリーカードを揃えた【フルハウス】だ。
もう五回目の勝負だったが、ただの一度も彼に勝つことはできなかった。
「また、きみの負けだな」
敗北の味が苦くて、思わず唇を噛む。
どうして私はこの人に勝てないのだろう。この、鼻持ちならない御曹司の彼にだけ。
「きみのチップは、さっきの勝負でゼロ。約束通り、代わりのものをいただこうか」
「……わかりました」
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