ずっと側にいる

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ふと後ろの方から子どもが何か大声で叫んでいるのが聞こえた。 「パパ〜! サンダル流されちゃった〜!」 半べそをかきながら、少女が父親に訴えていた。 父親は泣く我が子をなだめながらも、どうしようかと迷っている。 蒼汰は右手の人差し指をひょいと横に振る仕草をした。 川の中のサンダルが水しぶきと共に河原へ投げられた。 「パ…パパ、サンダル帰ってきた…」 「ん…!? そ、そうだねぇ?」 不思議そうにサンダルを回収し、テントへ戻って行った。俺達は何も言わずにクスクスと笑った。 「あ、兄ちゃん。今日持ってきたよ、漫画。この前、途中までだったから」 「やった! 一緒に見ようぜ」 二人はまた仲睦まじく、顔を寄せ合い漫画を読み始めた。 「…兄ちゃん、もし僕がこの町から離れても、本当に側にいてくれる?」 ページをめくる手を止めて、千草が聞いた。 「お前、青龍なめるなよ? どこに行ったって側にいてやるよ」 「あれ? ここを離れられないんじゃないの?」 茜がすかさず聞くと、少し間ができた後、蒼汰は咳払いをした。 「その時は…孔雀川の主は別の奴に交代して…俺は空汰の守護霊になる!」 「ありがとう…兄ちゃん!」 ガッチリと手を取り合う千草兄弟を見て、俺と茜は呆気にとられた。 「…そんな交代制とかあるの?」 「…知らん。けど、あいつはこれからも空汰をずっと守っていくよ」 「うん、そうだね」 漫画を読んで笑い合う二人を、俺達はしばらく笑顔で見守っていた――。                   〜 終わり 〜
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