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「ちょっとさ〜、側で見てて感動的ではあったんだけど…私は視えてないじゃん? だから、声は蒼汰さんなんだけど…見た目は白磁くんなんだよ。それが空汰くんと抱き合ったり、泣いたりしてるからさ……ごめんだけど、ちょっと笑えた」
「………」
確かに…従兄弟と同級生のそんなやり取りを側で見せられている茜としては、微妙な空気ではあったかもしれない。
「蒼汰さんは、結局大丈夫なのかな? あれから雨も上がっちゃって、姿は現さなかったし…」
蒼汰に千草の話を訂正しようと声をかけたが、現れなかった。体力が回復していないこともあるのだろう。
もしかしたら、川底でわんわん泣いていたのかもしれない…。
「ね〜、焼き肉行かない?」
「…無理。金ない」
「じゃあさ、白磁くんちで焼き肉パーティーしようよ」
「…なんでウチ?」
そんな会話をしながら、雨上がりの道を帰った。
後々の蒼汰の喜ぶ顔を想像したら、声に出して笑ってしまった。そしてまた「明日も雨にならないかな」と空を見上げた――。
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