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ずっと側にいる
***
「マジでさ〜、茜ちゃん…頼むって! ちゃんと教えてよ〜」
「何ですか〜、いいじゃないですか。結果オーライでしょ?」
梅雨開けが各地で発表された、土曜の昼。
孔雀川の河原では数組の家族や若者がバーベキューやキャンプを楽しんでいた。
空はやや明るく小雨が時折降っていたが、濡れることも気にせず子ども達は走り回っている。
俺達はそこから少し距離を取って、小さな荷物置き用のテントとテーブル、椅子を置き、持ち寄ったお菓子や飲み物、焼きそばをテーブルに置いて「打ち上げ」を始めた。茜いわく「千草兄弟、復活祝い」だそうだ。
油流出事故から一ヶ月程経ち、蒼汰の体力も回復した。
なぜ青龍と相性の悪い茜が視えているのかというと、祖父に頼んでミサンガを作ってもらったらしい。しかも俺がしているのより立派だ。
「白龍の加護を多めに受けられるようにしないと私の場合、晴れちゃって会えないでしょ?」
手首にしたミサンガを振りながら、俺に力説する茜の隣りで頬杖をつきながら蒼汰は笑顔だった。
「嬉しいな〜、茜ちゃんに気に入られちゃった、俺〜」
「良かったね、兄ちゃん! …あの、白磁さん、すみません。僕までミサンガ頂いてしまって」
茜に強く注意をできないのは、ちゃっかり千草の分まで祖父に頼んでいたからだ。そもそも祖父は茜を可愛がり過ぎるので、頼まれたら断るはずもない。
「いや、千草は持っていていいんだ。蒼汰といつでも話せるだろ」
嬉しそうに兄弟で顔を見合わせて笑った。
白龍には悪いが、この兄弟に関しては多目に見てやって欲しい。
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