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止まないかと思っていた雨が、帰る頃にはピタッと止んでいた。まだ雨雲の範囲は多いが、西の空からは光が差し込んでいた。
「…ねぇ、白磁くん」
「うん?」
「…いないじゃん! 青龍!」
おそらく雨が止んだせいだろう、蒼龍は姿を現さなかった。悔しがる茜をなだめつつ、河原から歩道へと移動した。
「あーぁ、会いたかったな~。通い詰めちゃおうかな〜」
孔雀川に来るまではテンションが異様に高かった茜だが、今はいつもの気だるさを取り戻していた。
「晴れ女だから会えないのかもな?」
目を見開いて驚きの表情を一瞬すると、また伏し目がちに前を向いた。
俺は軽く笑って、少し先を歩く一人の生徒に目線を合わせた。
「あ…」
見覚えのあるシルエットと西日に明るく染まった髪を見て、その生徒が今朝河原で会った人物だと認識した。
俺の目線を追った茜がしばし彼を見た後、俺に顔を向けた。
「空汰くんと知り合い?」
彼を知っていた事に驚いて振り向くと、改めて彼の名前を教えてくれた。
「千草空汰くん。同じクラスだけど…何かあった?」
「そうか…。いや、彼を孔雀川で見たんだ。白い花を川に流していた…」
茜は「ふーん…」とだけ返して、その後は黙って、傘の先端をつま先で蹴りながら歩いていた。
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