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鳥のさえずりが通り過ぎる朝、少女は目を覚ました。頭上から聞こえる寝息にぴくりと肩を震わす。どうやら、光蘭もそのまま眠ってしまったらしい。
「コウ、起きて」
昨日と逆転し、今日は少女が光蘭を起こす。
「主……?」
「うん、おはよう」
「主、おはようございます……」
寝惚けているのか、未だ少女を離そうとしない光蘭。時折、甘やかすように頭を撫でる仕草に少女は気恥ずかしくなる。
「あ、あのね、コウ」
「はい、なんでしょう?」
少女の呼びかけにしっかりと答える光蘭。寝惚けてはいなかったらしい。
「昨日はありがと」
「いえ、私の思いを言ったまでですよ」
「それでも嬉しかったから」
少しの間が空き、またも少女が口を開く。
「ちょっとの時間一緒にいただけでこんなこと言うのおかしいと思うんだけどね、コウがいてくれて良かったって思ってるの」
感情的にならないように静かに話し、俯きがちになる顔を必死に保つ。
「コウがいると安心出来て、家族みたいだなって思うようになっていったの」
目線を光蘭に合わせ、返答を待つ。
「……私は、主の家族にはなれません」
言うや否や、光蘭は少女を優しく離し布団に座らせる。
「主の家族は母君です。母君の代わりは私では務まりません。しかし……家族のように近しい存在になれたらと思っています」
少女に助けられたあの日から、光蘭は少女を主として見守り、接していた。けれど、一緒に暮らすうちに"仕える者"としてではなく、誰より傍で守り続けたいと思うようになっていったのだ。
「これからは私が主の……紗夜の傍にいる。永久に守ると約束しよう」
光蘭の滑らかに放たれた台詞は紗夜の体を暖かく包み、何度も涙を拭うのだった。
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