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「・・ここは?」
俺は、目を覚ました。
前に、夏休みの宿題から逃れようとして、記憶喪失のふりをしたことがあったが、ここは本当に、どこだか分からない。壁が丸くて妙に狭くて薄暗い。傍に誰か立っている。
「誰・・?」
「山田・・気が付いたか」
聞き覚えのある声だった。
「先生・・?」
担任の先生だった。
「先生、ここ、どこ?」
「山田・・ここは救命ポッドの中だ」
「きゅうめいぽっど?・・なにそれ」
「他の人達は他のポッドに乗った。これに乗ったのは俺たちだけだ。ポットの生命維持措置が切れる前に、人が住める星が見つかればいいんだか」
「他の・・え・・?」
「地球に隕石が衝突して・・・俺たちは運よく地球から脱出できた」
「な、なに・・それ・・なんの話?」
「地球は、滅んだんだ」
「いや・・いやいやいや・・何それ。そんなわけ」
「・・・そうだな。お前は、ずっと眠ってたから・・何も見てない。地球がどうなったか・・」
「え・・」
先生は、いつも落ち着いている。今も普段と余り変わりないように見える。けれど、いつもより、表情が暗かった。
「・・・・ほんとに・・?」
「ああ・・」
「そんな・・・」
そう言われても、やはり信じられない。
「お前の・・」
「え」
「夏休みの宿題に、地球の命運を左右する暗号が紛れていたんだ」
「は?」
「お前は、ずっと夏休みの宿題から逃げて手付かずだったから、暗号に気付くのが遅れたんだ」
「え・・・?」
「お前の記憶障害、あれは宇宙人がお前の脳に接触していたからだったんだ」
「え?!あ、あれは、俺の・・」
「ん?」
「え、あ、いや・・・」
え?そうなの?
え?どゆこと・・?
「すまなかった」
「え?」
「お前の異変にもっと早く気付いていれば、こんな事には・・」
「え・・だって先生の所為じゃ・・ない」
むしろ、俺のせい・・・?俺が、夏休みの宿題からずっと逃げてたから・・・
「先生・・」
「山田・・」
先生は、そう呟くと、急に苦しそうに壁に手を付いた。そのまま、ずるずると崩れ落ちた。
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