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一. プロローグ
「いつでも、この中に手をいれると、私達つながってますから……。」
そう言って、手渡された一枚のポケット。
そんな21世紀にもなって、
どこかのネコ型ロボットの道具のように上手くいくわけはない。
そう、自分に無理やり言い聞かせていた。
ただ、ちょっとだけそれを信じてみたくて。
いや、あゆさんの事をもっと知りたくて。
僕はあの日から、そっとその中に手をいれた。
あゆさんからもらった不思議なポケットの中に。
ただし、自分の中でルールは決めた。
季節が変わる度に、ポケットの中に手を入れてみよう。
いつでも触れ合うなんて、そんな失礼な事はできない。
ましては、相手もそのような事は望んでいない。
僕には家庭がある。
今の幸せを壊すつもりもない。
ただ、そう決めていた僕のルールは
春の雪のように解けていつしか消えた。
ポケットの中で握り返してくれた、
あゆさんの手のぬくもりと共に。
あゆさん元気にしていますか___。
今、幸せですか____。
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