僕の宝物

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 「まあ、そうですね」  「すまん。待たせた」  野太い男子の声。今回の依頼者である吉良(きら)先輩が小走りで僕らの方へ近づいていた。体格は良いが右腕にギプスをしているからか、走る姿はどこかぎこちない。  「おはよう、吉良くん」  「おはようございます、吉良先輩」  「おう。二人とはあまり話さないから、ちょっと緊張するな」  あはは、と快活に笑う吉良先輩を見て、僕らも笑ってみせる。が、僕の笑みはぎこちなかったかもしれない。普段、笑わないから。接客業は無理だろうな、と、無数にある将来の一つを内心で潰した。  「じゃあ、行くか」  「あ。ちょっと待って。そこ、自販機あるから」  と、佐賀先輩が自販機へと歩き出す。白いポーチから財布を取り出していた。  「なんで自販機?」  ああ。吉良先輩からしたら意味がわからないか。僕は簡単に説明する。  「能力に必要なんですよ。炭酸系の飲料水が」  「へえ。にしてもすごいよな。佐賀の能力は」  「そうですね」  宝物を発見する。それが佐賀先輩の能力だ。オカルト染みているが、佐賀先輩の能力は本物。もっとも、能力の使い道はそれほどないから、佐賀先輩が小さい頃にテレビでもてはやされたくらいで、世間の認知も薄い。  「お待たせ~」  サイダーのペットボトルを手に持つ佐賀先輩が、僕らの方へ戻ってくる。それじゃあ、早いところ、片付けるか。  「それでは改めて、行きましょうか。吉良先輩の宝物を探しに」
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