僕の宝物

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 ☆  ショッピングモールの入り口にある、フロアマップを佐賀先輩が確認する。僕は念のためスマホでショッピングモールのサイトを開いた。吉良先輩がつぶやく。  「たまに来るけど、少し変わったところもあるんだな」  「そうですか?」  「ああ。カレーの店が無い。あそこ、気に入っていたんだ」  「確かフードコートで食べられますよ、カレー」  「いや、あの店のカレーじゃないと、嫌だ」  はっきり断言する吉良先輩。よほど好きだったんだろうか。だが、これで吉良先輩の宝物がカレーでないことは確定だ。すると、ぷしゅ、と音が鳴った。サイダーのペットボトルを開けた音だ。  「よし。始めようか」  と、佐賀先輩がペットボトルを傾け、人差し指にサイダーを垂らす。それから佐賀先輩は目を閉じて、指に付いたサイダーをフロアマップに垂らした。シュワシュワ泡が立つと、液体が不自然に動き出す。吉良先輩が小さく驚く。  「おお。こうやって宝物の場所を特定するのか」  「はい。この建物に吉良先輩の宝物があることは、事前にスマホのマップで試していました。ただショッピングモールだと範囲が広いので、こうして直接、フロアマップを利用している感じです」  「なるほど。佐賀の能力には、正確な地図と、炭酸水が必要なわけだ」  「ええ。まあ、対象人物のイメージも必要ですけど。あ。止まりましたね」
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