僕の宝物

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 サイダーの液体が、一つのエリアで止まった。場所は、スポーツ用品店だった。  「あ……」  吉良先輩は、自身の宝物がスポーツ用品店にあるとわかり、言葉を失っていた。何か、思うところがあるのだろうか。スポーツ用品店そのものが宝物ということはないだろう。宝物が、場所だったケースは今までもあった。だが、吉良先輩の故障した右腕から、僕でもおおよその見当はついた。僕はあえて、質問する。  「何か、気づいたことはありますか?」  「そっか。まだ、俺にとって宝物だったのか」  「吉良先輩?」  「悪い。ここからは一人で行動してもいいか?」  合流してから十分程度しか経っていないにも関わらず、解散することが心苦しいのだろう。僕としては、むしろ長期戦にならなくて良かったと思うくらいだが。  「もちろん。いいよね、五宝?」  「はい。僕は別に」  「助かる」  「良かったね。宝物があまり高価なものじゃなくて」  ししし、と佐賀先輩がからかう。吉良先輩は怒るわけでもなく、どちらかと言えば、泣きそうに見えた。けれど佐賀先輩に合わせて、笑って見せた。  「テニスのラケット、結構するんだぞ」
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