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「そうなんだ。じゃあ、大切にしないとね」
大切にしないとね。その言葉が指すのは、きっとラケットそのものではないだろう。吉良先輩も似たようなことを感じ取った様子だった。
「ああ。もう失くさない」
迷いのない口調。それから吉良先輩は手を振ってから、吉良先輩はエスカレーターに乗った。行き先はもちろん、スポーツ用品店だろう。
「いや~。今日は簡単に片付いちゃった」
と、佐賀先輩が両手を天井に向けて伸びをする。僕は「そうですね」と言ってから、提案した。
「どうします? 早いですけど、お昼にしますか?」
時刻は十時半を過ぎた頃。飲食店は、やっているところはやっている、といった具合か。もう少し待てば、どこも営業を開始するだろうが。
「あ。うん」
なんだろう。目を丸くして。僕の言葉が意外だったみたいに見える。しかし、佐賀先輩はすぐに笑顔になった。驚いているように見えたのは、きっと気のせいだろう。
「それじゃあ、フードコート行こうか。何、食べようかな~。五宝は何、食べる?」
「うーん。カレーの気分ではない、ですかね」
「なにそれ?」
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