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「お似合いなんじゃない、二人」
「え、マジで?」
「マジマジ」
「なんだよ。適当だなあ」
不満そうに康太は唇を尖らせるが、その表情はまんざらではなさそうだ。
それを見た俺は素直に思った。
「好きなら付き合っちゃえばいいのに」
自然とそんな言葉が口をついて出たのは、俺が茅原の気持ちも知っていたからかもしれない。
これほどお似合いの二人が両想いなら、この恋の行方は華やかなハッピーエンドだ。
「簡単に言うよなあ、圭介は」
康太はそんなことを言って笑っていた。俺は「まあ、そうか」と曖昧な返事をする。
彼は昔からあまり自分に自信がない。なかなか思い切ったことができないタイプだ。茅原も似たようなタイプだと思う。
そんな二人が付き合うなんて、いつになることやら。
「付き合うって簡単じゃないもんな」
それは俺なりのフォローのつもりだった。
交際を始めるには多少なりとも勇気がいる。その勇気を捻出する時間があの二人は他の人よりも多めに必要だ。
けど、別に焦らなくていい。自分たちのペースで進めばいい。
きっとこの二人なら、いざというタイミングも合うんだろうから。
──なんて思っていたから、一週間後に康太の口から「実は茅原と付き合い始めた」と聞いたときは本当に驚いた。
「え、マジで?」
「マジマジ」
康太はにっと嬉しそうに笑う。
訊きたいことがたくさんあった。この一週間で何があったんだよとか。お前にそんな勇気があったのかとか。どっちから告白したんだとか。
だけど、それよりも先に言っておかなければいけないことがあるのもわかっていた。
「……おめでとう」
「へへ、ありがと」
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