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十九歳
「じゃあ集合は七時でいいかな」
学食の日替わり定食を箸でつつきながら茅原は予定を繰り返した。
俺は人気ナンバーワンメニューのビッグカツカレーをスプーンで掬いながらそれを聞く。もう何度も食べているカレーの味は、感動はなくとも安心感がある。
「いいと思う。花火始まる前に焼きそば食べたいし」
「たこ焼きとじゃがバターもね」
「チョコバナナ忘れてない?」
「それは言わずもがなでしょ」
学食のカウンターテーブルに並んで座る康太と茅原はいつものように軽快な会話を繰り広げていた。
さすがに三年以上交際を続けているだけあって、二人の波長は高校時代よりもさらに近づいているような気がする。
二人の会話を片耳で聞きながら辺りを見回す。昼時になれば学生でごった返す食堂も今はあまり人がおらず、席もほとんど空いていた。まだ二限目の講義が行われている時間だからだろう。
大学生は時間割を自分で組めるため、俺たち三人は講義の隙間時間を合わせてはよくこうして集まっていた。今日は少し早めの昼飯というわけだ。
「圭介もそれでいい?」
康太を挟むように座っていた俺に、茅原は尋ねる。俺は福神漬けの食感を奥歯で楽しみながら「おっけ」と頷いた。
「楽しみだねえ、おっきい花火」
今週末に控えた隣町の花火大会がそこにあるかのように茅原は空を見つめて微笑む。その笑みは高校の頃から何も変わっていない。
そんな気付きに釣られて、俺は福神漬けを飲み込んで声を出した。
「大学生になってもこの三人で祭りに行ってるとか、高校の頃は考えもしなかったな」
「あ、それわかる。高校のときは同じ部活だったし毎日会ってたけど、大学になったら会う回数も減って、それぞれ違う友達もできたりするんだろうなあってなんとなく思ってた」
「そんなこと考えてたのかよ二人とも。僕は毎週読んでるマンガの次の展開ばっか考えてたのに」
「康太はもうちょっといろんなこと考えなさい」
ははは、と康太は笑い声を上げ「ちょっと飲み物取ってくる」と席を立つ。
俺と茅原は苦笑で見送った。
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