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「影で私にコソコソくだらないことしてんのも、若松は知ってるよ? 私が止めて『あげてる』だけ。『余計なこと言ってもっとヒドイことされたら面倒だから』って」  そのまま数歩先の靴箱の前に立ち、自分の靴の上に置かれたものを摘まみ出した。 「あ、あたしがやった証拠なんかないわ! 変な言い掛かりつけないでよ!」  この言葉を待っていた、と自然口角が上がるのがわかる。 「あるよ、証拠。あんたが私の靴箱にすっごい卑しい顔でゴミ突っ込んでるところ、宗が動画撮ってたんだけど気づかなかった? 今の、っていうかあいつのスマホのカメラ高性能で、遠目でもズームでバッチリあんただってわかるやつ」  杏美が放った銃弾に、玖里子は面白いほどに動揺を表した。 「全然おとなしくもないし、可愛げあるわけでもない私がショック受けてる、って若松すごい怒ってたよ。ねえ、それこそ私が『もう無理、なんとかして』って言ったら、あんたどうなると思う?」  必死で笑いを噛み殺しながら、目の前を飛ぶ羽虫の如き邪魔な女をじわじわと追い詰める。 「あたし、そんなつもりじゃなくて、……杏美、ホントに」 「私が『虐められて辛い、玖里子の顔見たくない』って言えば、あいつらあの動画の上映会するんじゃない? あんたが学校やめるまでずっと、ずっと、あちこちで何度でも! 全部あんたがやったことの結果だからどうしようもないよね。まあさすがにネットには、──うーん、宗ならどうかなあ?」  この場に至っても口先だけの謝罪さえする気のない、自分の立場を理解できていないらしい女にもわかるように、と微に入り細を穿った説明をした。
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