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 いつもと同じ、光景。  葛西(かさい) 杏美(あずみ)が教室に入るなり、大声で騒いでいた派手で目立つグループの女子たちが一瞬で静かになった。  入り口を、……杏美の方をあからさまに目だけで窺いながらのヒソヒソ話。 「葛西。おはよー!」 「おはよう、若松(わかまつ)」  自分の席に座っていたクラスメイトの若松 亮輔(りょうすけ)が威勢よく立ち上がり、杏美に声を掛けて来るのに素っ気なく挨拶を返す。 「杏美ちゃん」  友人の小椋(おぐら) 佳映(かえ)に小声で呼ばれ、杏美はそちらへ向かった。 「佳映。どうかした?」 「あんなの気にしないでね。……ごめん、杏美ちゃん」  呟くような彼女の声に申し訳なささえ感じる。彼女が心を痛める謂われもないのに気に病ませてしまっていた。──だからこそ決して関わらせてはならない。 「してない。あと佳映は絶対何もしちゃダメだからね! 巻き添え食うことない。……別に私のことなんて放っといていいのよ」 「そんなことできるわけないじゃない。でも、結局何もできなくて、私──」  この優しい、そして少し気弱な友人だけは守らなければ。 「あのさあ。私があんなのでショック受けるとでも思ってる? そんなわけないじゃん」 「そ、れは知ってるけど。でもあんなわざとらしいのって」  自分のために憤ってくれる佳映を、杏美はどうにか宥めようとした。
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