ただの雇い主と従業員のまま

3/3
48人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
 けれど私たちは村の人たちが想像するような夫婦ではなく、ただの雇い主と従業員のまま。  同じ部屋で寝ているけれど恋仲になるわけでもなく、ただただ同居人です。  いつかレオンが本当に奥さんをもらう日がくるとき、私は出ていかなければなりません。  恋仲でない相手だとしても、夫が歳近い女と同居していたら嫌でしょう?  ただ、そんな日が来てほしくないような、そんな気持ちがわいてきます。  命を助けてくれたレオンには返しきれない恩があります。  レオンに幸せになってほしい。  牛たちを大切にしてくれるお嫁さんを迎えることがレオンの幸せなら、それを歓迎すべきです。  それに、心を込めて動物を育てるレオンです。夫としても父としても、家族を大切にするのは想像できました。  夫婦として隣にいるのが、私ならいいのに。なんて。一瞬考えてしまって、すぐその考えを振り払いました。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!