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如月が積み上げられた書類の片隅から視線を投げかけた。編集長は、ゆっくりと椅子の音を鳴らしタバコに火を点ける。そして僕は、自分の記憶を遡り事実を知ることとなる。それはまだ両親が生きていた頃の話だ。
夏まつりへと出かけた僕は、露店でパソコンを手に入れた。周囲は浴衣姿の人々で華やぎ活気づいていた。面をつけた人など多く存在し、僕は何の躊躇いもなく、白狐の面をつけた露店商に声をかけた。
「ねえ、このパソコンって壊れてない?」
すると艶やかな着物を着た女が僕にこう言ったのだ。
『それは真実を語るものが所有していんした。未来のぬしが持つのに相応わしいモノになりんしょう』
「物は渡り歩く。それを必要としている者の所に、不思議と集まるものだ」
そう言った平沢タツジの言葉を、僕は思い出していた。
了
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