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「作太郎? 作太郎って、まさか呉服問屋の放蕩息子」
頓狂な編集長の声に、無心にパソコンのキーボードを叩いていた如月も顔を上げた。
「どうやら、旅をしながら絵を描いていたみたいですね」
「知り合いだったとはね、驚いた」
ズズズッと編集長はコーヒーをすすると椅子背を預け大きく背伸びをした。そして、意外なところで繋がるものだなと、しとしとと雨が降る窓の外を眺めた。
パソコンの画面はタツジの名をしばらくそこに止めた後、忽然とその姿を消した。アプリが消失したのだ。編集長は、ただじっと外の景色を眺め、僕はそっと画面を閉じた。
何の不思議も持たなかった。どこかで、それで良かったのだと安堵の面持ちでいたのだ。すると今更ですけどと如月が割って入ってきた。
「実は、そのゲームアプリ。先日、私もダウンロードしてみようと思ったんですけれど、アプリ自体が存在しませんでした」
「なにそれ。どういうこと?」
「たぶんですけれど、田野さんのパソコンのみにダウンロードできたものだと思われます。そもそも、そのパソコンはどこで手に入れたんですか?」
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