鬼灯

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鬼灯

 電子音で脳内が飽和している。  パソコンの画面上には、ドット絵の人形が右往左往し探しものを続けている。それを操作しているのが僕だ。  探しものは主人公の目。主人公は失ってしまった自分の片目を探して、湯けむりで霞む建物の一室に居る。建物は伝統ある日本庭園を持つ大正時代のものだ。長い廊下を持つ回廊の屋根は朱色。その軒先には提灯が等間隔にぶら下がっている。ぼんやりと灯る提灯の朱は、湯けむりに滲んで実に幻想的な雰囲気だ。  最近のゲームは凄い。ドット絵だというのに、背景がやたらとリアルなのだ。この国のどこかに本当に存在するのではないかとすら思ってしまう。いや、実際どこかの景色を模して作られているのだろう。そうした既視感が、ゲームの世界へと誘い、プレイヤーとの一体感を生み出す。実によく作られている。  それはそうと、目玉は一体どこにあるのか。僕は主人公を操作し、あらゆる所を探したが、目玉はなかなか見つからない。完全な手詰まりだ。攻略本でもあればいいのだけれど。
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