鬼灯

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「ギガン……っていうアプリゲーム」  目頭を指先で摘んで軽く揉み解した。張り付いた瞼を必死に開けた目は、ほんの少しだが焦点が定まったような気がする。僕は「ああっ」とだけ声を漏らした。  僕たちは、年四回の季刊誌を発行している小さな出版社で働いている。世間では需要の少ない心霊もの、所謂オカルト系の記事をメインとした雑誌の出版をしている。正直、いつ潰れるかもしれない会社ではあるが、お陰様で人間関係には恵まれている。僕のような人材でも続けられるというのは実にありがたい。仕事は忙しいが、割と自由にやらせてもらえているぶん、やり甲斐はある。  さて、先ほどより話題に上がっているゲームの話に戻ろう。  先ごろ発売になった僕たちの季刊誌夏号で、ホラー系アプリの特集を組んだ。読者からアンケートを募り、人気ホラー系アプリを一挙に掲載したのだ。すると編集部に一本のメールが届いたのだ。 「ギガン……ですか?」  如月が急須に湯を注ぐ。しばらく蒸らしたそれを、ヒグマの墨絵が描かれた湯呑みへと注ぎ入れた。 「そう。主人公の目をひたすら探すゲーム。でも見つからない」 「バグですかね?」 「さあ……」  湯呑みは編集長のデスクへと運ばれた。
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