プロローグ

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プロローグ

 世の中は実に奇々怪々。そんな世界が自分のすぐ傍にあったとしたら、覗いてみたいとは思いませんか?  話を聞くだけでも聞いてみたいと思ったことはありませんか?  実際にその場所に行き、その話が事実であるのか、体験してみたいと思ったことはありませんか?  世の中には、ごく普通に生活をしていれば出会うことのないその世界を、垣間見ることのできる人が居る。その人が見た世界を僕らは記事にし、本として売り出している。売り上げは上場とは決して言えません。月刊誌として発行していたオカルト系雑誌は、今では年四回の季刊誌となっている。しかし需要がないとは言い難い。少なからず、そうした世界を好む読者は、一定数存在するのは事実ですから。  ただ、そうした世界を覗くのは、できれば僕らの本の中だけに留めておくことを推奨します。片足を突っ込んでしまったが最後、それらの住人はじわりじわりとにじり寄り、あわよくば自分たちの世界へと引きずり込もうとするでしょうから。  僕らの仕事は、そうした世界と密接に隣り合わせている。油断をすれば僕ら自身も暗闇に飲まれてしまうでしょう。  そう。水際で遊んでいるくらいが丁度いいのです。
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