<5章>

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「ほんとは、見届けたい気もするんだけど」別れを惜しむ水仙。 「大学決まったら、神戸、遊び行ってもいいかな」  二人は、バスの中で連絡先を交換していた。水仙の志望校は大阪にある大学だった。 「いっすよ。下見ついでですよね」にこやかに応える輝彦。なんだかんだで昼前になってしまった。残された時間が少ないと思った輝彦は、手元に残ったお金で初めて特急券を買った。金沢へはあと四十分弱電車に乗るだけだ。 「輝彦くん」 「はい?」 「タメ口でいいよ」 「へ?いまさら?さんざん年上だって威張っといて?」  輝彦が笑う。それにつられて水仙も笑った。 「いーんだよ。今から許可」笑いながら、憎まれ口のように言う水仙。 「無事彼女さんに会えるように祈ってる」 「だから彼女じゃ・・・」苦笑いする輝彦。  特急電車がホームに入ってくる。水仙が、手を差し出した。 「え?」 「握手」  差し出された手を握る輝彦。その手をぎゅっと握り返す水仙。 「ありがとう」 「いえ、こちらこそ」 「気を付けてね」  輝彦はうなずくと、電車に乗り込んだ。自由席の窓側に座ると、電車が動き出した。手を振る水仙に、輝彦も手を振り返した。水仙の姿はすぐに遠くなり、そして窓の範囲から外れていった。  水仙は、一人残ったホームから、走り去る電車にずっと手を振っていた。
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