<6章>

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「この度は」仏壇に線香をあげ、美織の母に頭を下げる雅彦。一緒に、頭を下げる輝彦。 「いいえ、本当に遠くから、ありがとうございました」  美織の母は、スマホを見て彼が輝彦であることは理解しているようだったが、その姿については、やはり疑問に思っていたようだった。輝彦は、雅彦を呼ぶ間に自分の言葉で丁寧にそれを説明し、またそれがきっかけで金沢に来たことも話した。 「ご自身大変なのに、本当にありがとうございます」美織の母は、輝彦の手を握って礼を言った。 「それでは、これで」雅彦が言いかけた時だった。 「もしお時間良ければ、少し待っていてくださいな」  そう言って、二階に上がっていく美織の母。しばらくすると、彼女は何枚かの服を持って、二階から降りてきた。 「美織の服です」一枚一枚めくるようにしてそれを見せる。そして、その中の一枚で手を止めた。 「それは?」 「美織がこの前買った服で・・・神戸に来ていくつもりだったみたい」  それは少し大人っぽい水色のワンピースだった。しばらくの間、その服に見入る輝彦。なんとなく、その服を着た美織の姿が想像できる。そしてその隣にいるのは、自分のはずだった。 「もしよかったら、お持ちくださって、着てやってくださいな」 「え」美織の母の言葉に驚く輝彦。 「輝彦さんには大変なことですし、不思議なことですけど」  彼女はそう前置きして言った 「美織がそう望んでいるように思えるんです。きっと喜んでいると思います」  輝彦は不意に、遺影の美織が輝彦を見て微笑んだような気がした。
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