<6章>

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 金沢の駅で珠江を拾い、そのまま食事を済ませ、三人はホテルにチェックインした。 「そかぁ。七夕さんやったんねぇ」  輝彦の話を聞いてぼそりとつぶやく珠江。部屋は和洋室で、ベッドが二台ある他に畳の部分があり、そこにもう一組布団が敷かれていた。シャワーをした輝彦は、今はホテルの浴衣を着ている。輝彦の発作を心配してか、雅彦は珠江を先に大浴場に行かせ、彼女が部屋に戻って来てから自分が大浴場へ行った。 「え?」 「テルは彦星、その彼女が織姫さん」 「なんだよ急に」 「いや、ちょうど明日七夕やん。そんなん思ってね」  しみじみとした感じで続ける珠江。 「きっと彼女も空から見てそう思とるよ・・・・ていうかお父さん、だいぶ堪えとるな」 「ごめん。母さんもだろ」 「せやねぇ。頭ではわかっとっても、どうもいまいち受け入れられんちゅうかね・・・・」  戸惑った顔を隠さない珠江。 「母さん」そう言いかけながら、彼はそれを感じた。 「ごめん、言ってるそばから来たわ」 「ほな、どしたらいい?」 「レジャーシート敷いて」  部屋の畳の部分に慌てて車から持ってきたレジャーシートを敷く珠江。まだ動けるうちにと、輝彦は裸になってその上に横たわった。辛うじて男性の面影とシンボルは残してはいるが、そう言われなければわからない程度にはなっている。 「寒くないかい?」それを気遣う珠江。 「大丈夫」  身体の中から込み上げてくるものを感じて目を閉じる輝彦。その素肌が急速に干からびるように色を変え、ヒビだらけになる。そしてそのひび割れからめくり上がるように剝けていくと、中から新しい肌が姿を現す。それは一度だけでなく、発作中は連続的に何度も起こるため、古い肌が剝けていくのはまるで身体から粉を吹いているかのように見える。そしてその何度も肌が剝けるにしたがって、少しづつ身体の形が変化していくのだった。  部屋に戻って来た雅彦と共に、珠江はその様をじっと見届けていた。  しばらくすると落ち着いたのか、その変化が止まる。その体を拭く珠江。 「オレ、今日このまま寝るわ」横たわったまま言う輝彦。 「シャワーするかい?」 「いや、いい」珠江の問いに答える。 「シーツだけ掛けといたほうがええんとちゃう?」 「うん」  雅彦が輝彦の身体にシーツをかける。そのまま彼は目を閉じた。
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