2人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな彼に思わず、
「俺は、取り返しのつかないことをした。……もう生きる必要なんて」
「だからバカっつってんだよ! 家族とか、将来とか、もっと色々あっただろ? オレよりも大切なものが、たくさん……自分とか、自分の家族のために使うべきだろ、その力は」
「悠人は、家族と同じくらい。……大切だったから」
「んだよ……わけ分かんねぇ……」
悠人はシーツを力の限り握りしめ、うつむいてしまう。
窓の外から少しばかり陽が差し込んだ。夜明けだった。
悠人は目元をこすり、自らを繋ぐ管を外しながら呟く。
「和真。もう少しだけ、お前の寿命をくれ。自分で分かる、オレは1日も持たない。……同時に2人で、死ねるようにしたい」
「なんで」
「……一緒に、お前の罪を背負うよ」
泣き腫れた顔で微笑む彼に、首を振る。
「なに、言って……!」
「大丈夫、一緒だ。ほら、手を出して」
「ダメだ、俺はたくさんの人を殺した、たくさんの人を泣かせた。1人で誰もいない山奥とかで死ぬべきだ」
「それはオレが許さない。……なぁ、和真」
優しい声だった。涙を浮かべる悠人の瞳は、朝陽を浴びて煌めいている。その顔つきは15歳の少年のままだった。
そっと、彼に抱きしめられる。
「今まで、よく、がんばったな」
「……なん、で」
何故、責めてくれないのだろう。
俺を裁けるのは、お前だけなのに。
涙が出るほどの温かさが、肌に染みる。
嗚咽して顔をうずめていると、ぽつんと悠人が問うてくる。
「和真はさ。……最後に、何したい? ほら、今日が最後なんだからさ」
「…………さいご、に……」
しばし沈黙し、涙を落とさぬように目を閉じた。
「……公園で、アイスが、食いたい」
最初のコメントを投稿しよう!