夏の公園で、ふたりでアイスを

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 まだ陽が登り切らぬ早朝の公園。  着くなりベンチに2人で座った。よく和真と来ていた場所だ。 「もうすっかり朝だなー」  明るい空に呟くと、「そうだな」と和真(かずま)はアイスバーを渡してくれる。 「体調、大丈夫か。15年も眠ってたら、普通は動けない。こうして座るのも本当は」 「んー、和真より運動バリバリ出来たのになー! なんかシャク! 身長だって和真を抜けるかどうかーって感じだったのに」  微笑むと、和真はポカンとしながらも微笑んでくれる。 「懐かしいな」 「オレにとっちゃ昨日の話なんだけど」 「悪い。……そうだな」  和真は病院を抜け出してここにいる。本当に命があと少しなのだろう。  アイスバーの封を開ける。9月らしいが、もう残暑と呼べるほど暑くない。蝉の声も昨日の嵐のせいか弱々しい。  アイスバーを舐めながら、和真に問いかける。 「和真。……明日があるなら、なにしたい?」 「……明日があるなら、か」 「オレはまた、一緒に学校に行きたい。あと和真んちの猫ちゃん撫でたい」 「あー……そうか、お前が眠る前は生きてたなぁ」  和真は目を細め、早朝の爽やかな風に髪を揺らす。
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