夏の公園で、ふたりでアイスを

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 ***  出会いは10歳の頃だった。俺は猫を1匹飼っていた。コバンという名前のトラ猫だった。当時のコバンはすっかり老いて、寿命を迎えるのも時間の問題だった。  いつ、自分の能力に気づいたのかは覚えていない。ただ自分が『生物の寿命を吸い取る』『寿命を他の生物に与えて延命する』できることを知っていた。  やり方は簡単だ。手を添えて念じるだけ。  ただし条件が3つほどあった。1つ目は『寿命を与える場合、他の生物から吸い取らなければならない』。無から寿命を生成して延命することは出来ず、つまりは犠牲が必要だ。  2つ目は『寿命を移す種族は同じでなければならない』。猫のコバンを延命するのであれば、同じく猫から寿命を吸い取って与える必要がある。  そして3つ目は『寿命を永遠に伸ばすことは出来ない』。生物の体が限界を迎えそうになると、寿命を与え続けても伸びなくなる。この能力で寿命を延ばす際、治療は出来ない。  そう、俺の能力は無限に生物の寿命を伸ばせる訳ではない。それでいて犠牲が必要だ。吸い取った寿命も1日程度しか保持できない。  それを知っていてもなお。10歳の俺はコバンを絶対に死なせたくないと思っていた。毎日のように野良猫を捕まえて寿命を吸い取り、コバンの命を伸ばし続けた。
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