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公園のベンチに座り、能力やコバンことを悠人に話した。
悠人は『そっか』とアイスバーを片手に軽い口調で、
『すっげー力持ってんじゃん! いいなー! なんか漫画の主人公みたい!』
俺は戸惑っていた。能力のことを誰かに話したのは初めてだった。
悠人は俺の話を理解したうえで、
『コバンの命を伸ばし続けるのもいいけどさ、他の猫を殺すのは辛いじゃん。それなら、コバンの命を他の猫にあげちゃうってのはどう?』
えっ、と俺は声を上げたと思う。驚く俺に、悠人はうなずいて、
『コバンの寿命を他の子にあげるんだよ。そうしたらコバンの命は無駄じゃないだろ? ……だた死んじゃって消えるよりはいいかなって』
俺には無い発想だった。コバンを死なせてしまうことに抵抗はあったが、もう死なせてやりたい気持ちもあったのだ。俺はその提案を受け取った。
その後、俺は近所にいた野良の黒猫に、コバンの残りの寿命の全てを与えた。やがてその黒猫を家に上げて飼うようになると、悠人も一緒に可愛がってくれた。
その頃にはもう、親友と呼べる仲になっていたと思う。
俺の能力は、2人だけの秘密になった。
中学生になっても俺たちは2人でつるんでいた。周囲が公認するほどの仲だった。
コバンの件以来、能力は使わなくなっていた。だが能力の良い使い道はないものかと密かに医者を目指すようになった。
その考えは全て、悠人のお陰だった。悠人の夏陽のような笑顔が、俺の人生を明るくしてくれるような気がしていた。
あの夏の日までは。
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