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8月の半ば。
入道雲、青い空に田んぼ道。その景色を、自転車で突風のように駆け抜けていた。
15歳、中学校からの帰路。悠人と2人乗りだった。
自転車を漕いでいた俺は、後ろに乗る親友に問いかけた。
『悠人! このあとどうする?』
『アイス! 売店でアイス買って公園で食べようぜ!』
『おっしゃ了解!』
出会った日のように、学校帰りにアイスを買って公園で食べる。当時の俺たちには定番の流れだった。
通っていたのは、いつもの道だった。
踏切近くの横断歩道。公園まで、残り数分。
その刹那だった。
信号を無視したトラックが、ちっぽけな俺たちを跳ね上げた。
気づけば血に染まって動かない悠人が転がっていた。
俺は幸い動くことができた。真夏のアスファルトの熱や蒸発していく血の匂いで気が狂いそうな中、悠人へ這った。
悠人は頭を強打したらしく、だらんとワタが抜けた人形のようで。
このままだと、10分程度で死んでしまう。彼に触れて悟った。
ダメだ、死んでしまう。
――――与えなければ。
半ば本能で周囲を見渡した。俺たちの他に、跳ねられた歩行者が2人。中年の夫婦のようだった。
彼ら寿命は、数日ばかり残っていた。
だが死ぬ。数日で、彼らは死ぬ。
それならば。
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