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夏の公園で、二人でアイスを
「遅くなって、ごめん」
夕暮れの病室。ベッドで眠り続ける親友に呟いた。
彼は30歳、同い年だ。沢山の管に繋がれており、これらが停止すると彼の命も終わってしまう。
15年もの間、彼は目覚めないままだ。
俺はこの病院に勤める医師であり、彼の主治医。
彼の頰を包むように、手を添える。
「……今日も、また」
彼の命を、伸ばしてしまった。
俺は生まれつき、人にはない能力を備えていた。医者という立場は、この能力を使うに都合がいい。
「今日は201号室の桜庭さんの命を、3日分貰った。そしてそれを今、お前に……与えた。桜庭さんは、もう助からない。だから命を貰った、お前に与えた」
骨のような彼の手を握りしめる。
「お前が目を覚まさないまま、15年……その間、俺はずっと色んな人の命を吸い取って、お前に、与えて……」
首を振る。僅かに聞こえる蜩の声が鼓膜を揺らした。
もうじき日が暮れる。夜がくる。
九月になってもなお、夏は終わってくれない。
――――『すげぇ能力じゃん。きっとお前は色んな生き物を救う為に生まれてきたんだよ』
幼い頃の彼の声が聞こえる。
眠り続ける彼の名前は、佐久間悠人。近所に住む親友だった。
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