今更元の世界に戻っても困る程の期間

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 先ずは、表示する為のパネルを考えた。硬質の透明な硝子を手に入れ、それと金属のプレートをぴったりと重ねる。金属のプレートに、こちら側の世界へ、何かを召喚する為の魔法陣を描く。それから、その魔法陣の周囲に召喚対象となる物の指定を……いや、これなんて書こう? そもそも、パネルはRBGに白色を加えた発光体ありきだ。自分でしておいてなんだが、硝子だけを用意してどうする。  始めは、電子ペーパーの方面で試すべきか。あれなら、磁力発生装置と磁力で移動をする物質があれば表示も出来る。他に必要となるのは、物質を振り分ける細かいハニカム構造か。磁力で移動をする物質に着色すれば、数色ならば表現が出来る。そう、スーパーや家電店の値札の様に。  そうなると、先ずは砂鉄の様なものがこの世界に存在するかどうかだ。それも、細かい粉末状に加工出来て、あわよくば着色してもその性質が変わらない物質。魔法使い向けの素材を売る店を覗き、何か良さそうな材料が無いか、時間のある時に見て回った。それと同時に、図書館で魔法道具に関する書籍を漁った。  異世界召喚者のスキルが開花したのか、以前より早く本の内容を頭に入れられる様になった。術者の能力によれば、予め表示していた文字を特定の魔力を浴びせることで隠された文字を出せると言う。この能力を使う場面は、他者に知られたく無い内容を偽りの文字列で誤魔化す時。研究内容を盗まれない為に、魔法使いが利用すると言う。  ただ、その能力を習得する為には、自らの魔力の波動を熟知している必要がある。何分、特定の魔力を流した時のみ、隠された文字を表示するのだ。似た魔力で表示されても困るし、自分の魔力を浴びせても隠していた文字が表示されないなら手間を掛けた意味がない。要は、指紋でロックを解除するのに、指紋の形を手書きで模倣出来るかの様な能力が必要となる。  魔法使いの体に流れる魔力の波は人それぞれ。掌から放出する魔力の波も人それぞれ。魔法の適正属性が同じの場合は似た魔力の波になるが、あくまでも似ているだけ。それを、自分の魔力だけに反応する様に術を構築する。殆どの人間は、書類を隠す方面で、情報を守っている。  研究をしている魔法使いの数自体、それ程多くはない。だから、この方面の書籍も少なく、基本的な原理は書いて有るが、専門的な人が読むことを前提にしている様だ。理系文章に近く、それを読み慣れていれば問題ないのだが。
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