異世界の技術に頼ってみよう

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異世界の技術に頼ってみよう

 情報を召喚する技術を試行錯誤しながら、また時は過ぎた。そろそろ、勇者御一行は幹部レベルの敵を倒しているのだろうか? そして、勇者御一行が為すべきことを済ませたら、私達の扱いはどうなるのだろうか?  そもそも、他の召喚された人達の行方も分からないのだが、元々知らなかった人達だった上に流され易い性格も相まって、長いこと行方を気にしないままだった。我ながら冷たい人間だとは思うが、仕方有るまい。あちらからもコンタクトは無い。つまり、お互い様である。  さて、持ち運び易いディスプレイを引っ提げて、交渉に向かうとしよう。試行錯誤の後で、ディスプレイの自作は無理だと分かった。ラズベリーなパイだって、パーツを組み合わせはするが、一般人が全てを一から作成する訳でも無い。つまり、そもそもが無謀だった。魔法があるから何でもどうにかなると思っちゃう異世界ハイ。これはアカンやつ。  素直に「何を作ろうとしていたか」を、異世界の人に明かす。それから、「元の世界に戻れないなら、せめて情報だけでも得ようと考えた」ことも伝える。これにより、元の世界に戻れる可能性が有るかどうかも探る。もし、勇者御一行がやるべきことをやったなら「実はそれがトリガーとなって、元の世界に戻れる」のかも知れない。そう、眼鏡を掛けたオーガの様見た目のなおじさんが、異世界から長い時を経て帰還した様に。 「なる程、それで魔力が不安定になっていたのですね。こちらと致しましても、同意を得ずに召喚した以上は、出来る限り快適な暮らしをして欲しいと考えております」  無難な答えが返ってきた。ともあれ、とんでもない要求と取られはしなかったし、先ずは第一段階はクリアと言うことか。 「もし、こちらの所有物をお借り出来るのでしたら、使われている技術を分析して、求めている大きさで技術の再現を致しましょう。ただし、技術者とは、興味深い仕組みを発見したら、それを発達させたくなるもの。この技術を、技術者が私利私欲の為に流用することも考えられます」  それはそうだろう。人間の興味や欲望は、他者が止められるものではない。 「では、この国を絶対に裏切らない者に託して下さい。この技術で国が豊かになるのであれば、何も問題は無いでしょう」  和やかに微笑み、相手の反応を待つ。すると、何故か相手が涙を流し始めた。 「なんと、この国のことまで考えて下さっていたとは。流石は大聖女様。慈愛に満ちておられる」  待て、拝むな。先程の話の何処に、慈愛に満ちた内容が有ったんだよ。 「それでは、こちらは有難く預からせて頂きます。信頼の置ける技術者を探し、大聖女様の求める物を開発をさせましょう」  どうしよう、思ったより話しが大きくなった。しかし、ここで否定する訳にもいかないので、当たり障りの無い言葉と礼を述べておいた。そして、求められた魔力を供給して自室へ戻る。
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