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エピローグ 滅
「リワースに宣戦布告する」
俺の言葉でその場がしんと静まりかえる。
「ベンブルグが貧しいのは、不当な賠償をさせられているからだ。リワースに攻め込み、それを正す」
「……い、いや。それは……」
「なにか問題でもあるのか?」
「ひ、ひぃっ。ありません!」
臨時議会員のひとりが意見してきたが、俺のひと睨みで悲鳴を上げて黙った。
「では、そのつもりで準備を」
「はっ」
一斉に立ち上がり、集まっていた人々が部屋を出ていく。俺も執務室へと戻った。煙草に火をつけ、深く煙を吸い込む。もう、文句を言う人間もいない。
「少々休まれてはいかがですか」
コーヒーのカップを置いたイェルナーをじろりと睨み上げる。
「必要ない」
眠ると、夢を見る。夢の中で俺は、いつもニコを殺している。あんなの、耐えられない。
「まあ、いいならいいですけど」
小さく肩を竦め、ヤツは部屋を出ていった。ひとりになり、ため息のように煙を吐き出す。イェルナーの求めるようにヤツの傀儡になってこの国を治めている。文句など言わせない。それに。
「……この世界を滅ぼす」
俺にとってこの国が、世界がどうなろうと関係ない。いや、ニコを否定し、拒否した世界なんて必要がない。必要のない世界は、滅ぼしてやるだけだ。まずは皮切りに、あのセドリードの故郷を滅ぼす。その次は、どこにしよう。
「くっ。くっくっくっ」
おかしくもないのに笑い声が漏れた。
【終】
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