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呆れた俺の口からため息が落ちていく。旧友とひさしぶりに一緒に食事とはいえ、もちろんふたりきりではない。ふたりほど護衛が付いてきている。
「たまには息抜きさせてよ。大統領府にこもってると、肩が凝っちゃってさ」
証明するかのように肩に手を置き、ニコが首を左右に曲げる。あそこはいまだに王政の名残で格式を大事にしているらしいし、確かに肩が凝るかもしれない。
「それにこれを逃したら、次はいつレンとゆっくりできるんだよ。まるで僕から逃げるみたいに、滅多に帰ってこないしさ」
「それは……」
皮肉るようにニコが笑う。なにも答えられなくて、フォークを置いた。俺たちの暮らす国、ベンブルグ連邦はもう長く、あちこちの国境で小さな小競り合いを繰り返していた。とある理由で軍は人手不足に近く、あちこちの戦場で俺は泥の中を這いずりまわっている。……というのは言い訳だ。忙しく戦場を駆け回っているのは事実だが、休暇がないわけではない。しかし、実家に帰ってこないのには理由があった。
「ま、いいよ。今日はとことん、僕に付き合ってもらうからね」
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