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駄々を捏ねるように激しく首を振るが、ニコの手は緩まない。
「それが一番いいって、レンにだってわかるだろ?」
俺にはなにもわからない。この手で、ニコを殺す? そんな恐ろしいこと、できるはずがない。しかしニコはその銃口を自分の身体に当てた。
「誰でもない、レンに殺されれば僕は幸せだよ」
にっこりと俺に微笑みかけるニコの目には涙が光っている。俺はただ、ニコに笑っていてほしいだけだった。俺はいったい、どこで間違えた?
「さあ、レン。僕を殺して」
ニコは促すが、身体は恐怖でガタガタと震えるばかりだ。
「嫌だ、嫌だ、できない」
「レン。僕を殺すんだ」
俺を片方の手で抱き寄せ、慰めるようにニコが背中を軽くぽんぽんと叩く。それから拳銃を握る俺の指に自分の指を添え、引き金を――引いた。
銃声をどこか別世界のように聞いた。
「ありがとう、レン」
呟いたニコからみるみる力が失われていく。流れ出る命をどうにか留めようと、渾身の力でニコを抱き締めた。しかしその鼓動は次第に遅くなっていき、ついに止まった。
「ニコ? ニコ!」
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