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身体を揺らすが、青白い顔でニコはもう動かない。ただ、なぜか幸せそうに笑っていた。
「あ、あ、ああーっ!」
俺の喉から、この世のものとは思えない絶叫がほとばしる。ここからしばらく、記憶がない。
――ニコが、笑って俺を呼ぶ。
「レン」
ああ、これは夢だ。だってニコはさっき、俺の手で殺した。それでも笑うニコが嬉しくて、俺も泣きながら笑っていた。
「ねえ。こんな話、知ってる?」
ニコが腰を下ろすので、俺もその隣に座る。場所は湖の畔になっていた。この風景には見覚えがある、よく遠乗りをしてふたりで来た場所だ。
「東の国ではね、恋を〝れん〟っていうんだって。ふふっ、レンと一緒だね」
おかしそうにニコが笑う。そうだ、いつかこんな話をした。
「レンの名前は、どういう意味なんだろうね?」
あのとき、俺はどう答えたのだろう。でも、今ならこう言う。
「俺の名前はお前に恋してるって意味だよ」
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