11人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
2
「それも七不思議みたいにタイトルあるんですか?」
たいして興味があったわけではないが、マナーとして僕は問いかけた。
「もちろん。深夜に響き渡る着信メロディよ」
「音楽ですか」
「もしかして音楽室と、かぶってるなんて思ってる? 聞いた人達が行方不明になった女子生徒の霊の仕業じゃないか。なんて言ってたそうよ」
マロン先輩が挑発しているのは分かっていた。不幸にあったという生徒を使うのは、学校の不思議の常套手段だ。
僕は不思議ほど嫌いなものはなかった。皆、真相を知ろうともしないで不思議の一言で自分は無知だと胸を張っているようなものだからだ。解けない謎などあるはずがないんだ。それはただ自分が知らないという事なだけで、ましてや霊だなんて馬鹿馬鹿しかった。
「いいですよ、付き合っても」
「なら私が案内するわ。行きましょ」
背中を向けた先輩が僕を促した。その表情は影になって見えない。
「ただ行ってもダメですよ。旧校舎の事をもっと知らないと」
「そっか。なら図書室に行くといいわ。この学校の歴史をまとめた物や、当時の当直の記録なんかもあるはず。学食の上よ」
先輩が指さしたのは、校舎とは別に建てられている円筒形の建物だった。
「分かりました。じゃあ明日行ってみます。また夜に。で、いいですか?」
うっかり自分たちが勝手に入り込んでいる事を忘れるところだった。
「わかった。明日の夜にね」
去ってゆく先輩の背中は、どこか寂しげに見えた。
最初のコメントを投稿しよう!