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 会議室や保健室などの扉と窓が並ぶ廊下を、僕の後ろに先輩が付いてくる形で進んだ。まず怪しいのは、真っ先に別棟となった学食と図書室だと僕は思っていた。  「図書室を見てもいいですか?」  学食があるのは廊下の突き当り。その手前に図書室があったので、僕たちは入ってみることにした。そこは今の図書室と比べたら殺風景に感じるほど、カウンターと本棚やテーブルが置かれた部屋だった。  目が慣れれば薄暗いが確かに全体を見渡すことが出来た。懐中電灯だったら照らした所しか見えなかっただろう。  違和感を見逃さぬよう、僕はゆっくりと歩きながら棚を揺すったり、壁を叩いたりしてみた。先輩はそれを静かに見守っていた。 「とりあえず一ヵ所怪しい場所は消えましたね。本命の学食に行きましょう」 「様になってるじゃない探偵くん」  何が楽しいのか今日の先輩はずっと笑顔だった。  図書室を出て僕らは立ち止まった。廊下沿い、四つある図書室の窓の先、学食の手前に人影が見えたからだ。もちろん僕が立ち止まったのは驚いた訳じゃなくて、警戒したからだ。  人影は動く様子がなく、慎重に近づいて行くとそれが真っ白な壁に浮かんだ草の影だと分かった。図書室と学食の間にあった壁は真っ白で、影がひと際濃いために人影に見えただけだった。  僕らは顔を見合わせてクスリと笑い合うと学食に入った。    
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